目 次
はじめに
第1章 女性のエイジング(老化)
第1節 各地域の男性と女性の平均寿命
第2節 女性のエイジング
第3節 女性ホルモンと活性酸素
第2章 女性の健やかな長寿へ向けて
第1節 女性のアンチエイジング(老化抑制)
第2節 女性の皮膚の老化を防ぐ
第3節 女性の性機能の老化
第4節 女性の健やかな長寿へ向けて
第5節 男性と女性の健康を守る食品の成分-
まとめ
はじめに
連載講座「女性だけのガンからからだを守る」では「女性だけのガンとはどのような病気か?」、「どのような症状が現れるか?」、「どのように診断されるか?」「どのように治療されるか?」、「どのように予防されるか?」などについて述べました。第4回までの講座を読まれた女性方から、「アンチエイジング」と「健やかな長寿へ向けて」を書いてほしいとの希望が寄せられましたので、女性の健康を願って本稿を書くことにしました。第5回は補遺として「女性のためのアンチエイジング」について述べます。
第1章 女性のエイジング(老化)
第1節 各地域の男性と女性の平均寿命
平成19年(2007年)の男性と女性の平均寿命、および各地域の男性と女性の寿命を調べると次のようになりました。
| |
男性 |
女性 |
男女差 |
| 全国平均: |
79.2歳 |
86.0歳 |
7.8歳 |
| 最長寿命の県: |
長野県
(79.8歳) |
沖縄県
(86.9歳) |
7.1歳 |
| 最短寿命の県: |
青森県
(76.3歳) |
青森県
(84.8歳) |
8.5歳 |
男女とも、青森県の人の寿命が短いことがわかります。青森県は男女とも、ガンによる死亡率が高い県です。青森県の女性のガンによる死亡率が高いことから、青森県の人の寿命が短いのは、ガンによる死亡率が高いことによると考えられます。
ガンという病気は人間の寿命を短くしています。ガンによる死亡率が低下すれば、男性は3.4年、女性は2.5年、寿命は長くなるそうです。
第2節 女性のエイジング
1. 老化とは:
広辞苑には、老化とは「年をとるにつれて生理機能が衰えること」と書かれています。また、生理機能とは「体の働き」です。老化学という学問は、「加齢とともに体の働きが衰える」いう生理機能の衰退は何故起きるか?と言うことを研究する学問です。
2.加齢による老化(生理機能の低下):
28歳の生理機能を100%として、加齢による生理機能の低下が調べられています。それによると、50歳では80%、60歳では70%、70歳では50%に低下しています。
3. 老化を決める遺伝子:
遺伝子とは、生物の遺伝情報などを伝える源となるもので、4つの塩基から成るDNAの配列によって発現します。老化の速度を決める老化の遺伝子が発見されてから、老化のメカニズムが少しずつわかってきました。老化はエネルギー代謝と深く関係していました。
4. 老化と活性酸素:
生物がエネルギーをつくっている器官は、ブドウ糖などの栄養物質と酸素との反応によってエネルギーを発生させているミトコンドリアという小器官です。この栄養物質と酸素との反応の際に活性酸素を副生させており、この活性酸素が生体を傷つけています。人間は、1年に3kg(1日に数グラム)以上の活性酸素を吸っていることになります。抗酸化性のビタミンやミネラルなどは、活性酸素を消去して生体を守っていますが、活性酸素の消去能は加齢とともに低下します。このことは老化の最大の原因です。
第3節 女性ホルモンと活性酸素:
女性ホルモンのエストロゲンによって、女性の容姿・動作・心などの女性らしさが保たれています。これらの女性らしさが加齢とともに低下するのは、エストロゲンの産生が低下するからです。特に、閉経後の女性の卵巣が産生するエストロゲンの量は減りますが、エストロゲンを産生する卵胞刺激ホルモンや黄体ホルモンは閉経後も高いレベルで保っています。
エストロゲンによって産生される活性酸素はビタミンCやビタミンEなどの抗酸化ビタミンによって消去されますから、これらの抗酸化ビタミンを十分に摂取していれば、心配することは要らなのです。
第2章 女性の健やかな長寿へ向けて
喫煙や飲酒は健康を害することについては、第4回で述べましたが、X線などによる放射線診断や航空機に搭乗して宇宙放射線に被曝することも老化を促進しています。
第1節 女性のアンチエイジング(老化抑制)
女性の老化を抑制するためにはアンチエイジング、特に閉経後の女性のアンチエイジングが大切です。そのためには、喫煙や飲酒などの生活習慣を改めるとともに、抗酸化性のビタミンやセレンなどのミネラルを摂取することが大切です。
もうひとつは、病気を免れる免疫力の維持です。女性の免疫力は、生殖期と言われる20歳前後で最大になり、加齢とともに低下します。免疫力を維持しないと病気にかかりやすくなります。第4回で述べたように、グルタチオンやβ―グルカンには免疫力を高める性質があります。免疫力を維持するために、これらを含んだ食品を摂取することが勧められます。
第2節 女性の皮膚の老化を防ぐ;
皮膚は表皮と真皮からできており、その下に皮下組織があります。年を取ると、皮膚がたるみ、シワがよってきます。シワは25歳くらいから目立ち始め、年をとるとともに数も増え、範囲は広く、深くなります。一番気になるのは顔のシワです。特に頬や目じりなどの目のまわり、眉の間、鼻から口のまわりにかけた場所などが目立ちます。
皮膚の強さ、柔軟性、弾力性を決めているのは、コラーゲン線維とエラスチン線維です。皮膚のシワは、これらの線維が老化に伴って細くなり、架橋によって密になる変化が原因であると考えられています。つまり、コラーゲン線維やエラスチン線維が変質すると、皮膚は弾力を失い、伸ばしても元に戻らなくなっていると考えられます。
老化とともに起きる皮膚のもうひとつの変化は、「皮膚の乾燥」です。年をとると、皮膚表面が保持している水分の量が減り、みずみずしさを失っていきます。皮膚の表面の角質層は水の蒸散を防いでいますが、加齢とともに角質層の機能、つまり「皮膚の保水力が低下する」らしいのです。
ご存知のように、日光は皮膚の老化を速めます(フオトエイジング)。日光によらない皮膚の生理的老化によるシワは、筋肉を引っ張るか皮膚をマッサージすれば元に戻りますが、フォトエイジングの皮膚は引っ張っても元に戻りません。紫外線を防護することが大切です。
第3節 女性の性機能の老化
女性は40歳代になると、やがて閉経し、卵巣の機能は停止します。このことに伴って、さまざまな体調の変化(更年期障害)が現われます。この時期から起きる、卵巣から分泌されるエストロゲンの量の減少は、骨粗しよう症の原因になります。しかし、他の器官でつくられる卵胞刺激ホルモンや黄体ホルモンの血中濃度は、老齢になっても高いレベルに維持されています。これらのホルモンの作用によって、いつまでも女性らしさが保たれているのです。
第4節 女性の健やかな長寿へ向けて
女性が元気で長生きするためには、「食事と運動」が大切です。ここでは、食事について述べます。「美味しいものを腹いっぱい食べると、心が豊かになる」と言いますが、生活習慣病の原因になりますから注意が必要です。
働いている成人が一日に摂取するエネルギーは 2500キロカロリー程度で、過剰に摂取すると、メタボリックシンドロームになる可能性があります。
味覚の感度は加齢によって低下するほか、腎機能や代謝機能も低下します。たとえば、消化器のタンパク質分解酵素の活性は、70歳になると20歳のときの1/3〜1/5に低下することが知られています。また、大腸の運動機能も低下し、便秘になりやすいこともわかっています。加齢に伴って淡白で消化の良い食べ物を好むようになるのは、このような生理機能の低下によると考えられます。
第5節 男性と女性の健康を守る食品の成分
男性と女性の食品の成分分析値が発表されています(表―1)。大まかに言うと、食品は6群に分けられています。1群は、魚、肉、卵、大豆などのタンパク質、2群は、牛乳、乳製品、海藻類、小魚類などのカルシウム含有食品です。3群は、ほうれん草や人参などのカロチンを含む緑黄色野菜です。4群は、キャベツ、リンゴ、トマトなどのビタミンCを含む淡色野菜です。5群は、穀類、イモ類、砂糖などの淡水化物です。6群は、油脂類、脂肪の多い植物油などです。これらの食品をバランス良く食べて健康を守りましょう。
表―1 食品分析の一例:
中程度の運動量の60〜64歳の男性と女性の所要栄養量:
| |
男性 |
女性 |
| 身長(cm) |
163.4 |
150.6 |
| 体重(kg) |
61.12 |
51.28 |
| エネルギー(kcal) |
2100 |
1750 |
| たんぱく質(g) |
70 |
60 |
| 脂肪(エネルギー比率:%) |
20〜25 |
|
| カルシウム(g) |
0.6 |
0.6 |
| 鉄(mg) |
10 |
10 |
| ビタミンA(IU) |
2000 |
1800 |
| ビタミンB1(mg) |
0.8 |
0.7 |
| ビタミンB2(mg) |
1.2 |
1.0 |
| ナイアシン(mg) |
14 |
12 |
| ビタミンC(mg) |
50 |
50 |
| ビタミンD(IU) |
100 |
100 |
なお、これらの数値は数〜10年ごとに改定されています。
まとめ
1.平成19年(2007年)の平均寿命は、男性が79.2年、女性が86.0年で、女性は男性より7.8年長生きでした。最長寿命の県は、男性が長野県(79.8歳)で、女性は沖縄県(86.9歳)でした。また、男性の最短寿命の県は、男女とも青森県(男性:76.3歳、女性:84.8歳)でした。
青森県は男女ともガン死亡率が高いことから、青森県の人の寿命が短いのは、ガンによる死亡率が高いことによると考えられました。
2.女性の老化の原因は女性ホルモンが産生する活性酸素であると考えられました。
3.女性のアンチエイジングは、特に閉経後の女性のアンチエイジングが大切です、そのためには、喫煙や飲酒などの生活習慣を改めることと、抗酸化性のビタミンやセレンなどのミネラルを摂取することです。また、病気を免れる免疫力を維持するには、グルタチオンやβ―グルカンを含んだ食品を摂取することが勧められます。
4.女性の皮膚のシワやたるみなど老化は、コラーゲン線維とエラスチン線維の変質や、皮膚の表面角質層の機能が低下する「皮膚の乾燥」も原因です。日光によらない生理的老化によるシワを防ぐには、皮膚のマッサージや紫外線を防護することが大切です。
5.女性の性機能の老化は、女性ホルモンの減少による更年期障害が原因ですが、他の器官でつくられる卵胞刺激ホルモンや黄体ホルモンなどは、老齢になっても高いレベルに維持されます。これらのホルモンの作用によって、いつまでも女性らしさが保たれているのです。
6.加齢によって腎機能を始め、代謝機能が低下し、大腸の運動機能も低下して、便秘になりやすくなります。淡白な味で消化の良い食品を食べましょう。
7.中程度の運動量の60歳−65歳の男性と女性の健康を守る食品の成分と、それらの摂取量を示しました。ご参考になさってください。
おわりに
本校を作成するに当たって、石井直明著「分子レベルで見る老化」(講談社・ブルーバックス)と藤本大三郎著「老化を防ぐ科学」(講談社・ブルーバックス)を参考にさせていただきました。付記して感謝いたします。
本連載講座を終わるに当って
「女性だけのガンからからだを守る」と題して、5回にわたって連載した本講座は終わりました。専門家ではない著者が、この連載講座を書に当たって、NHKテレビテキスト「きょうの健康」と国立がんセンター総長垣添忠生先生が総監修された「別冊NHKきょうの健康−これだけは知っておきたいガンの情報、ガンの治療」を主に参考にさせていただきました。
本連載講座を書くことにしたのは、乳ガンの治療を受けていた患者さんから、「どうして私が乳ガンに罹ったのでしょうか?」と、「これから私はどうしたらよいでしょうか?」と言う質問に答えるためでした。「女性だけのガンの予防」と「女性のためのアンチエイジング」は、女性の皆さんに捧げるものとなりました。これらを参考にして、健やかに長寿を楽しんでいただきたいと思います。
ご質問がありましたら、下記のEメールにご連絡ください。
t-kagiya@ra2.so-net.ne.jp
−(完)−
(2008年8月)
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