[連載講座]


「女性だけのガンからからだを守る」

(第4回) 女性だけのガンの予防

京都大学名誉教授
鍵谷 勤
t-kagiya@ra2.so-net.ne.jp

目 次

はじめに
第1章 女性だけのガンに罹っている人のからだを守る
  第1節 ガンの転移からからだを守る
  第2節 ガン治療の副作用からからだを守る
  第3節 ガンの再発を防ぐ
  第4節 二次発ガンからからだを守る
第2章 女性だけのガンに罹らないために
  第1節 ガンの一次予防、二次予防、三次予防と女性だけのガン
  第2節 ガンの化学的予防と女性だけのガン
  第3節 女性だけのガンに罹らないために
まとめ


はじめに

 連載講座「女性だけのガンからからだを守る」の第1回講座では、「日本の各地域(都道府県)における女性だけのガンによる死亡率」を調べました。続いて第2回講座では、「乳ガン、子宮頸ガン、子宮体ガン、卵巣ガンとはどのような病気か? どのように診断されるか?」について述べました。そして第3回講座では、「女性だけのガンの治療法」について述べました。これまでの講座で「女性だけのガンの診断法と治療法」について知っていただけたと思います。

 最終回の第4回講座は、「女性だけのガンの予防」です。まず、乳ガン、子宮ガン、卵巣ガンに罹っている人の転移や再発を予防するにはどうすれば良いか?これらのガンの治療による副作用を抑制するにはどうすれば良いか?二次発ガンを予防するにどうすれば良い?などについて述べます。そして、女性だけのガンの一次予防法、二次予防法、三次予防法について述べ、次に、女性だけのガンの薬剤による化学的予防について述べます。最後に、本連載講座の目的の「女性だけのガンに罹らないために」において、各地域の女性だけのガンによる死亡率に注目し、死亡率を低下させる方法について述べます。

第1章      女性だけのガンに罹っている人のからだを守る

 女性だけのガンに罹っている人の問題のひとつは転移と再発の予防であり、もうひとつはガンの治療に伴う副作用の抑制です。この章では、治療したことがある人の二次発ガンを予防することを含めて述べます。

第1節 ガンの転移からからだを守る

1.      ガンの転移とは?:

 ガンの転移とは、ガン細胞が、発生した場所(原発巣)から別の場所に移転して増殖し、ガン細胞の塊(腫瘍)になることです。ガンが周辺の組織に広がるためには、ガン組織に新しく血管が生じて酸素や栄養を摂取する必要があります。

 ガンの転移のルートには、ガン細胞が血液中に入って、血流に乗ってほかの臓器に移動して増殖する「血行性転移」、ガン細胞がリンパ液に入って、リンパ管を通って飛び火し、リンパ管の要所に存在するリンパ節内で増殖する「リンパ行性転移」、ガン細胞が臓器の壁を通り抜け、腹腔や胸腔などに飛び出して、ほかの臓器に転移して行く「藩種性転移」があります。転移によって生じた新しい病巣は「転移性腫瘍」と呼ばれます。ガンが、どれかの臓器に転移して生じたガンは、原發ガンの悪性度などの性質を残しています。

2.      ガンの転移を予防するには?:

 ガン細胞が血液やリンパ液に入って転移するためには、ガン細胞が血管やリンパ管の管壁に取りつく力、つまり接着力が必要になります。ガン細胞の表面にあるフイブロネクチンという糖鎖タンパク質は細胞の接着を通じてガンの転移に関係していると考えられています。また、血液中に入ったガン細胞は、血管壁に取り付き、それを食い破って外の組織に侵入する力が強いほど転移ガンになりやすいことも考えられます。これらの課題については、現在も研究が行われていますが、転移を予防する妙薬はみつかっていませんでした。

 ところが、最近、筑波大学の林 純一教授と島根大学の本間良夫教授の共同研究によって、ガンの転移を抑制できることがわかりました。マウスの実験によると、転移しやすいガン細胞のミトコンドリアを移植するとガン細胞は転移し、活性酸素を抑える薬剤を飲ませると転移は抑えられたそうです。

 ミトコンドリアは自動車のエンジンのように、生命エネルギーをつくる働きをする小器官で、ひとつの細胞に数千個入っています。活性酸素とは、過酸化水素(商品名:オキシドール)のような、普通の酸素より酸化力の強い酸素です。  

 両教授の研究から、活性酸素がガンの転移を起こしたと考えられます。活性酸素がガンの転移のどの過程に、どのように作用しているかはわかっていませんが、転移抑制の突破口になる重要な研究です。臨床研究の成果が待たれます。

第2節 ガン治療の副作用からからだを守る

 毎年、60万人の人がガンにかかり、放射線療法や抗ガン剤療法などの治療を受けています。これらの療法によって、ガン細胞は死滅させられますが、健康な組織も障害を受けています。放射線療法の際に起きる副作用としての急性障害について述べます。

1.  放射線療法の副作用:

 急性放射線障害は、照射された場所がひりひり痛む火傷のような皮膚障害」や下腹部に照射されたときに不愉快に感じる「放射線船酔い」の症状です。これらの副作用は、2〜3日で治ること多いようです。下腹部に照射されると、食欲が落ち、下痢が起きることもあります。いずれにしても、これらの障害は放射線療法が終わると、2〜3週間後には止まります。

(1)      乳ガンの放射線療法の副作用:

 乳ガンの放射線療法の副作用は、治療の終わり頃に現れる放射線火傷と腕の「むくみ」などです。脇下のリンパ節に照射されると、リンパ管のリンパ液が流れにくくなり、腕が腫れて「むくみ」ます。  

 3−4期の子宮頸ガンの放射線療法では、外部照射と子宮の内部に管を入れた腔内照射を組み合わせた治療が行われます。この放射線療法では、直腸が損傷され、数カ月後にお尻から出血することがあります。

放射線療法の急性障害:

 放射線療法の急性障害を表―1に示します。

表―1.放射線療法の急性障害

  障害器官 発症開始時 発症期間
(1)中枢神経障害:
  吐き気・嘔吐 照射の1〜6時間後 1〜2日
  発熱 照射の3〜6時間後  1日
(2)器質障害:
  口内炎 照射の7〜10日後 2〜3週間
  下痢 照射の7〜10日後 2〜3週間
  脱毛 照射の2〜3週間後 治療期間中
(3)骨髄障害:
  白血球・血しよう板減少 照射の7〜10日後  2〜3週間

 これらの急性障害は、放射線療法の期間、つまり最大6週間の期間内に発現します。

 また、放射線療法では、多かれ少なかれ白血球が減少します。健康な人の白血球は約5000個/mlですが、2000個/ml以下に減少すると、感染症の危険性がありますので、放射線療法は中断されます。

3.抗ガン剤(化学)療法の副作用:

 抗ガン剤は全身に回るので、治療の翌日に現れ、数日で消失する「だるい(倦怠感)」、口内炎、悪心・嘔吐、下痢、便秘、蕁麻疹などの皮膚障害が起きることが多いです。 

 著者は、30年前から「ガン治療の副作用抑制問題」に取り組んできました。基礎研究は、放射線や抗ガン剤による生体分子のDNA塩基(チミン)水溶液の変性反応に注目し、この反応に及ぼすビタミンEやビタミンCなどの抗酸化ビタミンにブドウ糖が結合した化合物(配糖体)や亜鉛、マンガン、銅、セレンなどの抗酸化ミネラルを含有したサッカロマイセスセレビジエ酵母というビ−ル酵母の影響を調べ、この研究の動物実験を行い、これらの抗酸化性物質の副作用抑制としての有用性を臨床研究で確かめました。この7月には、インドとの共同研究によって、シスプラチンの腎毒性がビタミンC配糖体によって抑制されること、および、その理由が、シスプラチンによって生じる活性酸素を消去することであることが分りました。 

 また、(独)放射線医学総合研究所との共同研究によって、亜鉛含有酵母の放射線防護作用の研究から、生体の放射線致死障害が血管損傷であり、この損傷を亜鉛含有酵母が防いでいることもわかってきました。これらの生体防御研究は、放射線や抗ガン剤による副作用抑制の研究を前進させています。

 実際、放射線治療や抗ガン剤治療を受けていた患者さんから、ビタミンC配糖体を服用して、吐き気、食欲不振、不眠、下痢、便秘などの副作用が軽減されたとの知らせをいただいています。一人でも多くの患者さんを副作用の苦しみから救いたいと思っています。

第3節 ガンの再発を防ぐ

 外科手術、放射線療法、抗がん剤療法などによってガン治っても、再発しないか?と気になさっている人は多くおられます。ガンが治った人でも再発する可能性があるのは、ガン細胞が完全に存在していない(不完治)か、あるいは少数個のガン細胞を不活性化するガン免疫の低い体質の人です。

 もともと健康な人でも、毎日数千個のガン細胞が発生していると考えられます。しかし、人間がガンに罹らないのは、十分なガン免疫力があるからです。 

 血液には酸素を運ぶ赤血球や血しょう板などの、生体が生きるために必要な成分のほかに、生体を防御して健康を守っている白血球があります。

 血液細胞成分の白血球には、単球といって、組織に移行するとマクロファージという大食細胞になって、ガン細胞を食べてしまう細胞が含まれています。マクロファージなどのガン免疫細胞が十分に活性であれば、ガン細胞は増えません。

 このマクロファージは、酵母に含まれるグルタチオンや酵母、カビ、キノコなどに含まれるβ(ベーター)−1,3-グルカンという多糖類によって活性化されることがわかっており、純粋なβグルカンはパン酵母から抽出できることもわかっています。この純粋なβグルカンを配合した製剤は、ガンの再発を予防できると期待されます。

第4節      二次発ガンからからだを守る

 ガンの治療を終わった人は、10〜30年後に二次発ガンに罹る可能性があります。以下、放射線療法と抗ガン剤療法による二次発ガンについて述べます。

1.放射線療法による二次発ガン:

 放射線被曝による発ガンの最小線量と潜伏期は、表―2のようになっています。

表―2.放射線発ガンと潜伏期

発生部位 推定最小線量(レム) 潜伏期間(年) 平均潜伏期間(年)
子宮 100−1,000 1〜40 10.1
大腸 460 1〜31 13.6
乳腺 1,470 10〜44 22.6
1,800  2〜42  11.7
咽頭・喉頭 4,000 8〜50 27.3

 ちなみに、最近、数ミリメートルのガンを発見できるCT(コンピューター断層撮影法)検査などの放射線診断による発ガンが社会問題になっています。

 CTによる被ばく線量は胸部X診断の被ばく線量の数百倍も高いのです。日本では毎年、7587人(3.2%)が放射線診断によってガンに罹っていると推定されています。

 また、高い高度の成層圏を飛行している飛行機の搭乗員の宇宙線被爆による発ガンが指摘されています。原子力発電所の作業員の年間平均被曝線量(約1ミリシーベルト)の3倍も被曝している乗務員がいるといわれています。これらの放射線被曝による発ガンが懸念されます。

2. 抗ガン剤療法による二次発ガン:

 各種の抗ガン剤による二次発ガンの種類を表−2に示します。

表−2.各種の抗ガン剤による二次発ガンの種類

抗がん剤                二次発ガンの種類

1.メルフラン、シクロフォスファミド  急性白血病
2.クロランブシル           肺ガン、急性白血病
3.メトトレキセ−ト          皮膚ガン
4.アザチオプリン           悪性リンパ腫
5.スチルベストロール         膣ガン、子宮内膜ガン
6.タモキフエン            子宮体ガン
7.ブスルファン            乳ガン、急性白血病
8.シクロフォスファミド        膀胱ガン
9.その他の抗ガン剤          急性白血病

 表−2からわかるように、「抗ガン剤は総じて発ガン剤である」といっても言いすぎではありません。乳ガンの再発を抑制するタモキシフェンは抗エストロゲン薬で、広く使われている薬剤ですが、二次発ガンとして子宮体ガンを発症させるというのです。まさに「抗ガン剤は諸刃の刃」です。

3.二次発ガンからからだを守るには?

 折角ガンを治療したのに、10年以上経った後に再び別なガンになると言うのです。どうしたらよいのでしょうか?女性の二次発ガンからからだを守るには、腫瘍が特異的に血液中に放出する腫瘍マーカーの値に注目します。血液中の「SCC、CA125,CA19−9,CEA,CYFRA」などの腫瘍マーカーの量が基準値より高い場合には、主治医に相談することをお勧めします。

 ご自分の腫瘍マーカー値を毎月グラフに書いて、その動向に注意しましょう。

女性だけのガンに関連した腫瘍マーカーと基準値を表―3に示します。

表―3.女性だけのガンに関連する腫瘍マーカーと健常人の基準値

腫瘍マーカーの名称 健常人の基準値
CEA 5ng/ml
CA15-3 25 ng/ml
CA125 12-17U/ml
CYFRA 2 ng/ml

 

 これらの数種類の腫瘍マーカーを参考にしてガンの進行状態が判断されます。ご自分を二次発ガンから守るために、腫瘍マーカーの値に注意を続けてください。もし、これらの値が健常人の基準値より高くなったら、主治医に相談してください。

第2章 女性だけのガンからからだを守る

 厚生労働省が進めているガン予防には、一次予防、二次予防、三次予防があります。

第1節 ガンの一次予防、二次予防、三次予防と女性だけのガン

 1996年(平成8年)に当時の厚生省は、それまでの「成人病」の名称を「生活習慣病」という名称に変更しました。生活習慣の改善によってガンを予防(一次予防)しようとしたものです。それまでは、ガンの予防は、早期発見・早期治療の二次予防でした。さらに、ガンの転移や再発を防ぎ、ガンで死なないためのあらゆる予防措置を講じる三次予防があります。

 ガンの一次予防とは、「生活習慣を改善することによってガンに罹らないようにする」ことです。

1.女性だけのガンを予防する一次予防:

 生活習慣病といわれ、ガンに罹らないための一次予防には、免疫力の低下をもたらす「たばこ」や子宮頸ガンに関係する「性生活」があります。確かに、「たばこは百害あって一利なし」といわれ、ベンツピレンなどの発ガン性物質を含む喫煙によって、ニトロソアミンという発ガン性物質を生じさせています。また、免疫力を低下させて生じる乳ガンを増やしています。喫煙している若い女性は子宮ガンに罹りやすいそうです。「百薬の長」といわれる酒類の飲み過ぎは免疫力を低下させて子宮ガンを増やすようです。

 アルコールは、体内で代謝されてアセトアルデヒドになりますが、これは発ガン性の物資です。また、アルコールは免疫系の働きを抑えるといいます。喫煙や酒飲みの習慣は女性だけのガンを増やしているとお考えください。

 アメリカでは、乳ガンの再発を予防するために、人工閉経といって、子宮とともに卵巣を摘出する手術が普及しているそうです。この手術を37歳までに受けた人には、乳ガンはほとんど発生しないそうですが、野蛮な考えだと思います。

2. 女性だけのガンを予防する二次予防:

 女性だけのガンを予防する二次予防は、ガンを早く見つけて早く治すこと(早期発見・早期治療)です。乳ガンや子宮ガンは集団検診によって早く見つけられるようになってきました。女性だけのガンを予防するためには、腫瘍マーカー検査を続け、この数値が高くなる傾向が出たら医師に相談してください。

3.女性だけのガンを予防する三次予防:

 ガンを予防する一次予防と二次予防をくぐり抜けて発症してきたガンを防ぐ方法が三次予防です。ガンの悪性化防止、ガンの再発や転移の防止、ガン患者の苦痛の抑制、QOL(生活の質)の維持などのあらゆる問題を採り上げます。     

(1)ガン細胞と正常細胞の違い:

 ガン細胞は、「際限なく増殖する」ことと、「転移する」ことが正常細胞との最も大きい違いです。正常な細胞は集まると、他の細胞を認識して増殖を止めますが、ガン細胞は、他の細胞の存在に無関係に増殖します。また、他の臓器に転移して増殖し、ついには生体を死に至らしめます。

(2)ガンの悪性化とは::

 ガン細胞が分裂して増殖する際、異常な構造のDNAを含む程度によって、悪性の度合いが異なります。前ガン状態のガン細胞は正常細胞とあまり変わらず、進行状態のガン細胞は変異したDNAをたくさん含んでいます。ガン細胞の悪性化を防ぐことは、三次予防の大事な研究ですが、あまり進んでいません。

第2節 女性だけのガンの化学的予防

 薬剤を使ってガンを予防するこの方法は、ガンの化学的予防と呼ばれています。「ガンに罹りやすい体質の人」や「ガンに罹って治療を受け、再発しなで元気に暮らしている人」などは、ガンの化学的予防を行った方がよいと考えられます。

1.エストロゲンは女性だけのガンの原因:

 乳ガン、子宮ガン、卵巣ガンなどの女性だけのガンが発症する第一の原因は「エストロゲンという女性ホルモン」です。第2回と第3回の講座で、エストロゲンが女性だけのガンの原因のひとつであることはおわかりいただけたと思います。

2.乳がんの再発を予防するタモキシフエン:

 女性だけのガンの化学的予防法のひとつは、乳ガンの治療薬として知られるタモキシフエンです。タモキシフエンを5年間使用した人は、治療していない他側の乳房に発生しやすい乳ガンの発生を予防できることがわかっています。

 タモキシフエンは女性ホルモンを抑制する抗エストロゲン剤です。このことは、女性ホルモンを抑制することが女性だけのガンを予防できることを示しています。ただし、乳がんの再発を予防するタモキシフエンは子宮体ガンの原因であることを知っておいてください。

3.活性酸素を消去する抗酸化性ビタミン類:

 ビタミンCやビタミンEは抗酸化性ビタミンとして知られています。ビタミンCは水溶性で、ビタミンEは油溶性です。著者はビタミンCやビタミンEにブドウ糖が結合した化合物(配糖体:グルコサイド)の活性酸素消去能に注目して研究しています。これらの配糖体は数時間持続的に活性酸素を消去することがわかっています。

4.乳ガン死亡率と血液中のセレン濃度:

 22カ国の女性の乳ガンによる死亡率と血液中のセレン濃度の関係が調べられており、血液中のセレン濃度が低いほど乳ガンの死亡率が高いという関係が成り立っています。それによりますと、英国の女性の乳ガンによる死亡率(人口10万人当たり)は、日本人女性の6倍も高いこと、および英国の女性の血液中のセレンの濃度は非常に低く、日本人女性の約1/3であるという関係があります。このことは、乳ガンは血液中のセレン濃度が低いほど発生しやすいことを示しています。女性の血液中のセレンは、エストロゲンによって生じる活性酸素を消去していることを示していると考えられます。

 ちなみに、発ガン性物質を投与したマウスやラットにセレンを含んだ餌を食べさせると、乳ガンやほかのガンの発症を抑制することがわかっています。セレンは活性酸素の分解触媒の活性中心です。セレンがガンを予防するのは、活性酸素の消去によると考えられます。セレンを含有した酵母が配合されているパンやケーキは市販されています。

5.ガン免疫の活性化:

 もうひとつの原因は、「ガン免疫の活性」です。90歳の女性が乳ガンに罹り、91歳でお亡くなりになった高貴な方がおられました。ガン免疫の活性が低くなっていたと考えられます。

6.ガン免疫としての白血球:

 血液中には、生体を防御する顆粒球、リンパ球、単球を含んでいる白血球があり、白血球には好中球、好酸球、好塩基球からなる顆粒球で、マクロファージとなる単球とT細胞、B細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞から成るリンパ球が含まれています。また、T細胞は、キラーT細胞、ヘルパーT細胞、サプレッサー細胞から成っています。これらの免疫細胞は、ガン細胞を貪食・殺生し、攻撃を助けて生体を防御します。

 健康な人の血液中の白血球の組成を表―4に示します。

表4.正常人の血液中の白血球(4000〜9000/mm3)の組成

顆粒球 含有率(%)
(1)好中球: 55〜60
(2)好酸球: 1〜3 
(3)好塩基球: 0〜0.7
リンパ球: 25〜33
単球: 3〜7

 

 顆粒球の大部分は、好中球で、多くの酵素を含んでいます。リンパ球は、ガン細胞を狙い撃ちにするキラーT細胞、キラーT細胞の生成を促進するヘルパーT細胞から成る80%のTリンパ球、抗体産生細胞になる20%のBリンパ球から成っています。これらの働きによって白血球はガン細胞を死滅させています。

 ガン免疫の活性は「加齢とともに低下」します。このため、高齢者はガンに対する抵抗力が弱いのです。

7.ガン免疫の活性を高めるグルタチン:

 マクロファージ内のグルタチオンという硫黄化合物がガン免疫を活性化することが知られています。白血球の減少をくい止める白血球増強剤として用いられているグルタチオンには、白血球を活性化する働きもあるそうです。

8.ガン免疫の活性を高めるβーグルカン:

 シイタケなどの筍類にはガン免疫の活性を高めるβーグルカンが含まれています。著者は、パン酵母から抽出した純粋βーグルカンに注目し、ガン免疫の活性化を研究しています。

9.各地域の女性だけのガンによる死亡率とその対策:

 各地域の女性だけのガンによる死亡率を表−4に示します。

表−4 各地域の女性だけのガンによる死亡率(人口10万人当り)

(1)乳ガン死亡率が最も高い県は東京都(18.5)で、最も低い県は沖縄県(9.6)でした。

(2)子宮ガンの死亡率が最も高い県は佐賀県(10.3)で、最も低い県は新潟県(6.2)でした。

(3)卵巣ガンの死亡率の最も高い県は青森県(9.8)で、最も低い県は滋賀県(3.0)でした。

(4)女性だけのガンによる死亡率が最も高い県は東京都(34.2)で、最も低い県は滋賀県(20.4)でした。

 乳ガン死亡率が最も高い東京都は、最も低い沖縄県の1.9倍、子宮ガンの死亡率が最も高い佐賀県は、最も低い新潟県の1.7倍、卵巣ガンの死亡率が

 最も高い青森県は、最も低い滋賀県の3.3倍で、これらの女性だけのガンによる死亡率が最も高い東京都は最も低い滋賀県の1.7倍も大きいのです。

 地域によって女性だけのガンの死亡率が大きく違うのは、ガンの罹患率が高いためと考えられます。

 女性だけのガンによる死亡率の高い地域にお住まいの方は、「抗酸化性のビタミン、ミネラル、グルタチオンなどによって活性酸素の消去能を高め」、「グルタチオンやβ―グルカンなどによってガン免疫を活性化する」からだをつくってください。

 

 まとめ

1.女性だけのガンに罹っている人の、ガンの転移を抑制するためには、ビタミンC配糖体が有効であると考えられました。ガンの治療に伴う副作用は、ビタミンCの配糖体やビタミンEの配糖体の服用によって抑制できることがわかりました。

2.放射線療法や抗ガン剤によってガンを治療すると、10〜20年後に二次発ガンが発症する可能性があります。ガンを治療したことがある方には、腫瘍マーカーを調べて早期に発見して治療することが勧められます。

3.ガンの予防には、喫煙の禁止や過剰飲酒の抑制などのガンに罹らないための一次予防、早期に発見するための検診などの二次予防、ガンの悪性化、転移や再発を防ぎ、ガン患者の苦痛の抑制、QOL(生活の質)の維持などの三次予防があります。

4.健康な人の女性だけのガンの化学的予防法は、エストロゲンが発生させる活性酸素を消去する性質のビタミンCやEなどの抗酸化性ビタミン類にブドウ糖が結合した配糖体が有効です。また、グルタチオンやβ―グルカンなどによって、ガン免疫を活性化することが大切です。

5.女性だけのガンによる死亡率の高い県と最も低い県の死亡率は、1.7倍〜3.3倍でした。

6.女性だけのガンを予防するために、「抗エストロゲン剤としての活性酸素の消去能とガン免疫を高める」体質の改善が求められます。

 

おわりに

 本稿を作成するに当たって、小林 博先生の著書「がんの予防 新版」(岩波新書)を参考にさせていただきました。付記して感謝いたします。

−(完)−

 

(2008年8月)