目 次
はじめに
第1章 乳ガンおよびその診断
第1節 乳がんとはどのような病気か?
第2節 乳ガンにはどのような症状が現れるか?
第3節 乳ガンはどのように診断されるか?
第2章 子宮ガンおよびその診断
第1節 子宮ガンとはどのような病気か?
第2節 子宮頸ガンにはどのような症状が現れるか?
第3節 子宮頸ガンはどのように診断されるか?
第3章 子宮体ガンおよびその診断
第1節 子宮体ガンとはどのような病気か?
第2節 子宮体ガンにはどのような症状が現れるか?
第3節 子宮体ガンはどのように診断されるか?
第4章 卵巣ガンおよびその診断
第1節 卵巣ガンとはどのような病気か?
第2節 卵巣ガンにはどのような症状が現れるか?
第3節 卵巣ガンはどのように診断されるか?
まとめ
はじめに
前回は、日本の女性だけのガンについて述べました。貴女がお住いの地域(都道府県)の乳ガン、子宮ガン、卵巣ガンなどの女性だけのガンによる死亡率は、高い方でしたか?低い方でしたか?今回は、日本の女性だけのガンとはどのような病気か?どのような症状が現れるか?どのように診断されるか?などについて述べます。
第1章 乳ガンの診断
第1節 乳ガンとはどのような病気か?
(1)乳ガンとは?:乳ガンは、乳房の中の「乳腺」にできるガンの総称です。乳腺は、母乳をつくる「小葉」と、それを乳頭まで運ぶ「乳管」から成っています。乳管の内側は「乳管上皮細胞」で覆われており、この細胞が内腔に向かってポリープ状に膨らんでくるのが「非浸潤ガン」と呼ばれるタイプのガンです。乳管の中や小葉に広がっていても、乳管内にとどまっている段階であれば、ほぼ治ります。「浸潤ガン」は、乳管上皮細胞の外側に向かって染み出るように増殖するタイプのガンで、転移や再発の可能性が高いことがわかっています。乳房の構造と主な乳ガンの種類を図―1(省略)に示します。
図―1.乳房の構造と主な乳ガンの種類(省略)
このほかに、乳頭に湿疹ができ、皮膚の病気と間違えやすい「パジェト病」というタイプの乳ガンや、乳房が赤く腫れて細菌感染を起こしているように見える「炎症性乳ガン」があります。
現在、乳ガンに罹る日本人の数は、年間約3万人で、すでに胃ガンを上回り、女性のガンの第1位の病気です。その数は年々増えており、2015年には4.8万人ぐらいになると推測されています。
(2)乳ガンは、どうして増えているか?
乳ガンが増加しているのは、「月経期間が長い」、「初産の高齢化」、「肥満」、「家族歴」などの乳ガン危険因子を持つ人が増えていることが関係していると考えられています。
「月経期間が長い」:卵巣から分泌される「エストロゲン」という女性ホルモンが乳腺組織に作用する期間が長いほど、乳ガンの発生率が高くなることが知られています。近年、食生活の欧米化によって、日本人の発育も体格もよくなりました。これによって、初潮が早くなったり、閉経が遅くなる傾向があります。その結果、エストロゲンの作用期間が長くなり、乳ガンの増加につながっていると考えられています。
「初産の高齢化」::妊娠中はホルモン環境が大きく変わり、これが乳ガンの発生を押さえる方向に作用していると考えられています。しかし、近年は、初産年齢が高齢化し、乳ガンの発生が始まる若年期に出産を経験しない女性や子供を産まない、あるいは出産回数の少ない女性が増えています。このことも乳ガンの増加につながっていると考えられています。
「肥満」:閉経後は卵巣に代わって、副腎から分泌される「アンドロゲン」という男性ホルモンが、脂肪組織に豊富に含まれる「アンドロマスターゼ」という酵素によってエストロゲンに変換されます。そのため、肥満の人は乳ガンのリスクが高くなります。
「家族歴」:母親や姉妹などに乳ガンの人がいる場合は、そうでない人に比べて乳ガンに罹るリスクが高くなります。
第2節 乳ガンにはどのような症状が現れるか?
(1)乳ガン細胞の特徴:乳ガン細胞の発育自体は,ゆっくりしているのですが、全身に転移しやすいのが特徴です。乳ガンが発生した時点で、すでにごく一部のガン細胞が血管やリンパ管に侵入し、全身に目に見えない転移を起こしている可能性が高いのです。乳ガンが特に転移しやすい器官は、骨や肺と肝臓です。ガン細胞がリンパ管を伝って、脇の下や鎖骨上のリンパ節に広がってしまうこともあります。
乳ガン患者の約9割は、「乳房のしこり」を感じて受診します。そのうちの約15%の人は痛みを伴いますが、一般には「痛みを伴わない」のが乳ガンの特徴です。また、ガンが皮膚近くの乳腺組織にできると、早期から皮膚に「くぼみ」や「ひきつれ」が見られることがあります。乳頭の真下にガンでき、このことによって乳腺が引きつれを起こすと、乳頭が陥凹することもあります。まれに、乳頭から分泌物が出ることがあり、これを「乳頭異常分泌」といいます。
健康な人でも、ホルモンの影響で、乳頭の数カ所から、透明またはミルク状の分泌物が見られることがあります。しかし、乳ガンの場合は、血液の混ざった分泌液が、乳頭の乳管開口部のひとつだけから出るのが特徴です。
(2)自己検診による乳ガンの早期発見:体の内側にある臓器と違い、乳房は体の外側にある柔らかい組織なので、「しこり」などの異常に気づきやすいガンです。乳ガンの自己発見法を示します。早期発見のために、これを習慣づけてください。
「乳がんの自己検診法」:チェックするポイントは、「くぼみ」や「引きつれ」がないか?乳頭がへこんでいたり、湿疹のような「ただれ」がないか?などです。
- まず、両腕を下げたままで、鏡に乳房を映して、乳腺や乳頭の状態を良く観察します。
- 両腕を挙げて、乳房を正面、側面、斜めから鏡に映して観察します。
- 次に、右の乳房を調べます。仰向けに寝て、右側の下に薄い枕を敷きます。右腕を頭のほうに上げ、左手指の腹で乳房の内側を中心に丁寧に触ります。
- その次に、右腕を自然に下げて、乳房の外側を中心に、同じように、左手指の腹で触ります。
- 最後に、わきの下に手を入れて「しこり」の有無を調べます。左の乳房も、3や4と同じように行います。
- 左右の乳頭を軽くつまみ、血液が混じった分泌物が出ていないか?を調べます。
第3節 医師による乳ガンの検査
乳ガンによる乳房の「しこり」は、乳線症や乳腺線維腺腫などの良性の病気でも見られます。医師は、これらを鑑別するために、次のような検査を行います。
乳ガンの検査(1)視診・触診:視診と触診は最初に行われる検査です。経験が豊かな医師であれば、視診と触診だけでも、約7割の確率で乳ガンを診断できます。
乳ガンの検査(2)マンモグラフイー:乳房を上下と左右からプラスチック板で押し挟んで、平らにしてから、エックス線撮影を行います。ごく小さな乳腺組織の変化や石灰化を捉えることができます。「しこり」をつくる前の早期のガンを発見できます。
乳ガンの検査(3)超音波検査:200万〜1500万ヘルツの超音波(可聴音波は20〜2万ヘルツです)を体の表面から当て、反射して来る波を調べて画像にして検査します。「しこり」の内部を調べるのに適しています。
乳ガンの多くは、マンモグラフイーと超音波検査で、ほぼ診断がつきます。
乳ガンの検査(4)MRI(磁気共鳴画像)診断:磁場の中に体を入れ、ガン組織内の水分子の状態を調べてガン組織の状態を細かく観察できます。
乳ガンの検査(5)PET(陽電子放射断層撮影)診断:ガン細胞がブドウ糖を取り込む性質を利用した診断です。陽電子という放射線を照射して断層写真を撮影し、ガンの位置や大きさなどを映し出します。
乳ガンの検査(6)CT(コンピューター断層撮影法):エックス線を体の周囲から当て、通過するエックス線をコンピューターによって断層の画像を計算し、ガンや骨を映し出します。
乳ガンの検査(7)穿刺吸引細胞疹:細い注射針を、皮膚の上から「しこり」に向かって刺し、病巣部の細胞を吸引して顕微鏡で調べます。多くの場合、この検査で診断は確定しますが、ごく一部は確定できないことがあります。
以前は、手術で乳房を切開して「しこり」の一部を摘出する「外科生検」が行われていましたが、現在は太い針を刺して、「しこり」の組織を採取する「針生検」が主流です。外来でできる検査です。
乳ガンの検査(8)乳管造影検査:「しこり」がなく、乳頭異常分泌だけが見られる場合に行われる検査です。先端を丸くした細い針を乳頭の乳管開口部に挿入し、造影剤を注入してエックス線撮影を行います。
このほか、直径1mm以下の細いフアイバースコープ(内視鏡)を、乳頭の乳管開口部から挿入し、乳管を観察する「内視鏡検査」もあります。今後は普及していく検査法です。
乳ガンの検査(9)転移を調べる検査:乳ガンと診断されたら、骨シンチグラフイーや超音波検査、CT検査、PET検査などによって、骨や肺、肝臓などへの転移の有無を調べます。
第2章 子宮ガンの診断
第1節 子宮ガンとは?
子宮にできるガンを総称して子宮ガンといい、婦人科系のガンの中では、最も頻度の高い病気です。医学的には、頸部にできるガンを「子宮頸ガン」、体部にできるガンを「子宮体ガン」と区別しています。同じ子宮ガンでも、子宮頸ガンと子宮体ガンは、性質や治療法が異なります。子宮ガンの種類を図―2(省略)に示します。
図―2.子宮ガンの種類(省略)
子宮は、女性の下腹部にある洋梨のような形の臓器です。膣に近い 細い部分の「頸部」と、胎児を育てる奥の部分の「体部」に分けられます。したがって子宮ガンも子宮頸ガンと子宮体ガンに分けられます。
日本では、以前は子宮頸ガンが子宮ガン全体の約9割を占めていましたが、近年は子宮体ガンも増えています。
(1)子宮頸ガンと年齢:子宮頸ガンは、30歳代から増え始め、40〜50歳代が最も多くなりますが、85歳を過ぎても30歳代の若い女性と同じくらい多い病気です。
(2)子宮頸ガンの原因と危険(リスク)因子は?:子宮頸ガンの原因は、まだはっきりわかっていませんが、原因にひとつに、「ヒトパピローマウイルス」というウイルスとの関連が挙げられます。ヒトパピローマウイルスとは、良性腫瘍(いぼ)をつくるウイルスの一種で、80種類以上もありますが、その中の16型や18型などの特定なタイプが子宮頸ガンに関係しているのではないかと考えられています。子宮頸ガンの患者さんからは、このウイルスが検出されています。ヒトパピローマウイルスには、多くの人が性行為によって感染しますが、そのほとんどは、免疫という「異物を排除するからだの仕組み」によって、数カ月の間に排除されます。ウイルスが免疫によって排除されずに、前ガン状態になっても、しばらくすると、その多くは消えてしまいます。ガンを発症するのは、ウイルスを排除できなかったうちのごくわずかな人です。このウイルスは、まれに子宮頸部の細胞をガン化させると考えられています。ヒトパピローマウイルスと免疫との関係については、現在、研究が進められています。
また、子宮頸ガンは、統計的に、「妊娠・出産回数の多い人」、「性交開始年齢の早い人」、「性交渉の相手が多い人」、または「性交渉の相手が多い男性との性交渉を持つ人」に多いことがわかっています。しかし、性経験のある人であれば、だれでも子宮頸ガンに罹る危険性があります。早期発見のためには、1年に1回は検診を受けましょう。
第2節 子宮頸ガンはどのようにして診断されるか?
子宮頸ガンは、30歳代から増え始め、40〜50歳代で最も多くなります。膣に近い子宮頸部は、指で直接触って観察できます。
(1)早期発見のための集団検診::満30歳以上の女性を対象にした集団検診が全国で行われています。これによって早期に発見できるようになったので、子宮頸ガンによる死亡率は年々低下しています。
子宮頸ガンは、ほかのガンと同じように、早期には、ほとんど症状が現れません。そのため、ガンに気づかず、検診を受けて、はいじめてわかるケースが多いのです。
(2)不正出血: ガンが進むと、不正出血が起こりやすくなります。これは月経以外の出血のことです。
特に、性交行為のときにガン組織に接触して出血することが多く、触診などの診断の時にも出血することがあります。
(3)黄色いおりものや腰痛:不正出血以外では、「黄色いおりもの」が出ることがありますが、比較的まれです。ガンがかなり進行し、骨盤まで広がると、「腰痛」が起きることがあります。
子宮頸ガンの検査(1)細胞疹:子宮頸部を綿棒か、「へら」のようなもので軽くこすって細胞を採取し、顕微鏡で調べる検査です。スクリーニングとして集団検診で行われているものです。外来で簡単にでき、痛みもほとんどありません。
細胞疹の結果は次表に示すように。クラスI〜Vに分けられます。
「細胞疹のクラス分類」:
クラスI:正常
クラスII:異常細胞を認めるが、良性。
クラスIIIa::軽度、または中程度の異型性を想定。
クラスIIIb::高度の異型性を想定。
クラスIV:上皮内ガンを想定。
クラスV:浸潤ガンを想定。
一般に、クラスIII以上の場合には、さらに詳しく調べるための「組織疹」が必要になります。
子宮頸ガンの検査(2)組織疹:細胞疹でガンが疑われる場合は、確定診断のために組織疹が行われます。膣拡大鏡(コルボスコープ)によって子宮頸部の粘膜表面を観察しながら、組織を採取します。組織を調べることによって、異形成(前ガン状態)や粘膜にとどまっている上皮内ガン、または浸潤ガンなどの区別がつきます。組織疹は外来ででき、ほとんど痛みもなく、数分で終わります。若干の出血はありますが、長くても数日で止まります。
子宮頸ガンの検査(3)視疹・内疹・直腸疹:子宮頸ガンは、医師が直接観察する「視診」や膣の中に指を入れて調べる「内疹」によって調べることができます。ガンの進行度を調べるためには、指を肛門に入れて調べる「直腸疹」が行われます。直腸疹によって、ガンが子宮から骨盤側に広がっているかどうかがわかります。
子宮頸ガンの検査(4)超音波検査・CT検査・PET検査・MRI検査:組織疹でガンと診断された場合は、超音波検査、CT検査、PET検査、MRI]検査などの画像検査が行われます。これらの検査によって、ガンの大きさや広がりの深さ、周辺の臓器やリンパ節への転移の有無が詳しく調べられます。そのほか、肺や尿管への転移を調べるために、エックス線造影検査や尿路造影検査が行われます。
子宮頸ガンの検査(5)血液(腫瘍マーカー)検査:血液中の「SCC」、「CA125」,[CA19−9]、「CYFRA」などの腫瘍マーカーの量を調べる検査です。一般に、治療効果の判定の目安として用いられています。
第3章 子宮体ガンおよびその診断
第1節 子宮体ガンとはどのような病気か?
子宮体部の内膜から発生するガンを子宮体ガンといいます。50歳以上の女性に多い病気です。以前は、子宮体ガンは子宮ガン全体の1割程度でしたが、現在は2〜3割を占め、都会ではさらに高くなっているといわれます。これは、晩婚化や妊娠回数の減少など。女性のライフスタイルの変化が背景にあると考えられています。
子宮体ガンの発症には、卵巣から分泌される「エストロゲン」というホルモンが関係しているのではないかと考えられています。エストロゲンは、排卵後の卵巣や胎盤から分泌される「プロゲステロン」という黄体ホルモンとともに、月経・妊娠・出産をコントロールしています。しかし、なんらかの原因で、プロゲステロンが分泌されず、エストロゲンが単独で分泌される期間が長く続くと、子宮体ガンのリスクが高くなると考えられています。具体的には、「妊娠や分娩の経験がない人」や「無排卵の人」などです。また、「肥満体の人」もリスクが高いと考えられます。
副腎から分泌される「テストステロン」という男性ホルモンは、脂肪の中でエストロゲンに変換されます。そのため、皮下脂肪の多い肥満の人は、それだけ多くのエストロゲンの影響を受けることになるのです。肥満の人の中でも特に、更年期以降の人や、若くても無排卵の人は、リスクが高くなります。40歳以上で、これらのリスク因子のある人は、特に定期的な検診を受けることをお勧めします。一般に、「子宮ガン検診」は、子宮頸ガンの検査ですから、追加して子宮体ガンの検査を受けるとよいでしょう。
第2節 子宮体ガンにはどのような症状が現れるか?
子宮体ガンは、早くから症状が出ることがあります。主な症状は、月経と無関係に出血する「不正性器出血」です。月経以外のときに出血したり、閉経後に少量出血するといった不正性器出血は、ほとんどの患者さんに見られるのが特徴です。また、50歳未満の人で、比較的早期の子宮体ガンでは、月経時の出血量が増える「月経過多」という症状も多く見られます。しかし、月経が不規則な人や閉経前後の人は、このような症状が出ても、単なる生理不順や更年期に伴う症状と勘違いして、見過ごしてしまうケースも少なくありません。不正性器出血は、子宮体ガンだけではなく、頸管ポリープや機能性出血など、良性の病気でも起こります。このような症状がある場合には、自己判断をせず、必ず婦人科で検査を受けるようにしてください。
第3節 子宮体ガンは、どのように診断されるか?
子宮体ガンが疑われる場合には、次のような診断が行われます。
子宮体ガンの検査(1)細胞疹と組織疹::子宮体ガンの「細胞疹」は、子宮体部に細い器具を挿入し、内膜の細胞を採取して顕微鏡で調べる検査です。これでガンが疑われる場合は、「組織疹」が行われます。これは、スプーン状の器具で子宮内膜の組織を少し掻き出して調べるものです。子宮頸ガンの組織疹に比べて多少痛みを伴うため、局所を麻酔して行う病院もあります。
子宮体ガンの検査(2)内診と直腸疹:ガンの広がりを調べるために、内診と直腸信が行われます。
病院によっては、「子宮鏡」という内視鏡の一種を子宮内部に挿入して、直接観察する場合もあります。
子宮体ガンの検査(3)画像診断:ガンの大きさや深さ、子宮外部への広がりを調べるのが画像診断で、CT,PET,MRI,超音波検査などがあります。特に子宮体ガンやその前ガン状態になると、子宮内膜が厚くなりますが、その診断には、超音波検査がたいへん効果的です。細胞疹や組織疹では、内膜の一部しか調べられませんが、超音波検査では、子宮内部の全体の状態を簡単に調べることができます。また、閉経後に子宮口が塞がり、細胞疹や組織疹が難しい場合でも検査することができます。超音波検査は、腹部に探触子という超音波を発する器具を当てる「腹部エコー」と、膣から探触子を入れる「径膣エコー」が中心です。
子宮体ガンの検査(4)子宮内膜前面掻爬:まれに、組織疹では子宮内膜異常増殖症(前ガン状態)なのか、またはガンなのかという区別が難しいことがあります。そのような場合には、子宮内膜の組織を特殊な器具を用いて全て掻き出して詳しく調べる検査で、通常は、全身麻酔を行い、1〜2日入院して行われます。
第4章 卵巣ガンおよびその診断
第1節 卵巣ガンとはどのような病気か?
卵巣は子宮の両側にある一対の臓器です。大人の親指大ほどの小さい臓器ですが、卵子をつくるとともに、女性ホルモンを分泌するという重要な役割を果たしています。
卵巣に発生する腫瘍には、さまざまな種類のものがありますが、そのうちの約85%は良性腫瘍で、卵巣ガンはそれほど多い病気ではありません。しかし、近年、卵巣ガンは少しずつ増加する傾向にあります。日本の卵巣ガンによる死亡数は、1994年には3871人でしたが、5年後の1999年には、4076人で、5%ほど増えています。
(1)卵巣は、表層上皮、性策間質、胚細胞から成っています。これらのいずれの組織にもガンはできますが、最も多いのは表層上皮から発生する「表層上皮ガン」です。これは、卵巣ガン全体の約90%を占めます。次に多いのが胚細胞から発生する「卵巣胚細胞腫瘍」です。卵巣胚細胞腫瘍は若い女性に多く、10〜20歳代にピークになります。その多くは卵巣嚢腫などの良性腫瘍で、悪性腫瘍のガンの頻度は、それほど高くはありません。
(2)卵巣ガンに罹りやすい人はどういう人か?:
卵巣ガンはあらゆる年代の女性に見られますが、患者数のピークは40〜50歳代です。なかでも、「初経が早い人」、「閉経の遅い人」、妊娠回数の少ない人」、「出産経験のない人」に比較的多く見られます。
近年、生活習慣の欧米化によって、発育がよくなり、それに伴って、初経年齢が低くなっています。女性のライフスタイルも多様化し、妊娠回数の少ない人や子供を産まない女性も増えています。その結果、女性ホルモンの分泌期間が長くなっていることが、卵巣ガンが増加する背景にあると考えられています。また、母親や姉妹などの家族に、乳ガンや卵巣ガンに罹った人がいる場合は、そうでない人に比べて、卵巣ガンに罹るリスクは3倍ほど高いといわれています。
第2節 卵巣ガンにはどのような症状が現れるか?
卵巣は、腹膜の後ろにあるために、卵巣ガンは症状が出にくく、早期の段階では、ほとんど自覚症状がありません。ガンがある程度大きくなったり、腹水が溜まると、「おなかが張る」、「下腹部にしこりや圧迫感を感じる」、「尿が近くなる」、「便秘する」などの症状が出てきます。しかし、これらの症状に気づいたときには、ガンはかなり進行しており、早期発見が難しいのが卵巣ガンの最も怖い点です。
転移によって気づく卵巣ガン:卵巣ガンが最も転移しやすいのは、腹部の臓器を覆っている「腹膜」です。腹膜への転移は、まるで種を播くように、ガン細胞は腹腔内に広がって行くことから、「腹腔播種」と呼ばれています。
ガンがさらに進行すると、ガン細胞は胸腔内に広がり、「胸膜」に転移します。すると、胸水が溜まって、「息きれや呼吸困難」などの呼吸器症状や「食事がのどを通りにくい」といった症状が出てきます。
このような転移による症状のために、呼吸器内科や消化器内科を訪れて、卵巣ガンが発見されるケースも少なくありません。
第3節 卵巣ガンはどのように診断されるか?
卵巣ガンの検査(1)「内診」:まず最初に、膣や肛門から指を入れて、卵巣が腫れていないかどうか?を調べる「内疹」が行われます。この内疹によって、卵巣ガンが疑われる場合には、次のような検査が行われます。
卵巣ガンの検査(2)「画像検査」:腹部のエックス線撮影や超音波検査、CTやMRI検査、PET検査などの画像検査によって、腫瘍の場所や大きさなどが詳しく調べられます。超音波検査は、腹部のほか、膣から直接、探触子を挿入する「経膣エコー」が行われることもあります。ただし、これらの画像検査では、腫瘍の有無は確認できても、良性か悪性の区別がつきにくいことがあります。また、ガンが腹膜に広がっていても、1cm以下の小さいガンだと、CTやMRIなどの画像には写りません。
さらに、卵巣腫瘍の約1割弱いは胃ガンや大腸ガンから卵巣に転移した「転移性卵巣ガン」です。転移性かどうか?は、画像では見分けがつきにくく、卵巣ガンと思って手術したら、肺や大腸から転移したガンであったというケースもあります。したがって、卵巣ガンの場合、画像検査だけで診断を確定することはできません。
卵巣ガンの検査(3)「開腹所見」:最終的な診断をつけるには、開腹して切除した卵巣組織を顕微鏡で調べた結果からガンであるかどうかが確定されます。ただ、最近では開腹手術を行わず、腹腔鏡を挿入して組織を調べることが試みられています。患者さんの身体的な負担が軽く、ガンと診断された場合には、すぐ手術に移れる利点があります。
卵巣ガンの検査(4)「腫瘍マーカー検査」:卵巣ガンの腫瘍マーカーは、いくつかありますが、最も感度が高いのは「CA125」という糖タンパク質です。ただし、早期ガンの場合、この値が高くなるケースはあまり多くはありません。また、逆にCA125の値が高かったとしても、卵巣ガンである可能性は7割程度です。そのため、早期発見にはあまり役に立ちません。診断の補助や経過観察の目安として用いられています。
まとめ
1.乳ガン、子宮頸ガン、子宮体ガン、卵巣ガンなどの女性だけのガンは、20歳代から一生続く怖い病気です。
2.乳ガンは、エストロゲンという女性ホルモンが関係する病気で、月経期間が長い人、初産年齢の高い人、出産回数の少ない人、肥満の人、母親や姉妹に乳ガンの人がいる人のリスクが高い病気です。
3.乳ガンは、「乳房のしこり」で発見されますから、自己検診が望まれます。
4.乳ガンは、視診・触診・マンモグラフイー・超音波検査・穿刺吸引細胞疹・乳管造影検査・骨シンチグラフイー・CT検査・PET検査・MRI検査などによって診断されます。
5.子宮頸ガンは、ヒトパピローマウイルスというウイルスが原因と考えられています。統計的には、「妊娠・出産回数の多い人」、「性交開始年齢の早い人」、「性交渉相手の多い人」、「性交渉相手の多い男性と性交渉を持つ人」に多いことがわかっています。
6.子宮頸ガンの症状は、早期ではほとんどありませんが、進行すると「不正性器出血」、「黄色いおりもの」が出ることや「腰痛」が起きることがあります。
7.子宮頸ガンは、「細胞疹」・「組織疹」・「視診」・「内疹」・「直腸疹」・「超音波検査」・「CT検査」・「PET検査」・「MRI検査」・「腫瘍マーカー検査」などの方法によって診断されます。
8.子宮体ガンは、卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンが関係しているガンで、「妊娠・分娩経験がない人」、「無排卵の人」、「肥満体の人」に多い病気です。
9.子宮体ガンの症状は、「月経異常」や「不正性器出血」などです。
10.子宮体ガンは、「細胞疹」・「組織疹」・「内疹」・「直腸疹」・「画像診断」・「子宮内膜全面掻爬」などによって診断されます。
11.卵巣ガンは、エストロゲンという女性ホルモンの分泌期間が長いことが増加の原因で、表層上皮から発症することが多いガンです。「初経が早い人」・「閉経が遅い人」・「妊娠回数の少ない人」・「出産経験のない人」「母親や姉妹に乳ガンや卵巣ガンに罹った人がいる人」に多いガンです。
12.卵巣ガンの症状は、早期にはほとんど自覚症状がありませんが、進行すると「腹水が溜まって、おなかが張る」、「下腹部にしこりや圧迫感を感じる」、「尿が近くなる」、「便秘する」などの症状が出ます。
13.卵巣ガンは、「内疹」、「腹部のエックス線撮影や超音波検査」「CT・PET、MRIなどの画像検査」、「開腹所見」、「腫瘍マーカー検査」などによって診断されます。
おわりに
この講座の作成にあたり、NHKのテレビテキスト「今日の健康2008・5月号」と別冊NHKきょうの健康「これだけは知っておきたいがんの情報、がんの治療」を参考にしました。付記して感謝します。
(2008年7月)
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