ミミズは1億2000万年前から生息していたようである。地球上には約3000種類のミミズが生存しているといわれる。日本では30年前(1975年)に農業の土壌改良や釣り餌としてアカミミズ(学名:ルンブリクス・ルブルス)が飼育された。
1.「ミミズは雌雄同種」:ミミズの染色体を調べると、性染色体が存在しない。このことから、ミミズは雌雄同種であることがわかる(以上は中村方子著「ヒトとミミズの生活誌」より)。
2.「環境とミミズ」:「沈黙の春」(レイチェル・カーソン著)によれば、ミシガン大学の構内には約370羽も生息していたコマドリが4年後には1羽もいなくなったしまった。その原因はキクイムシを殺すために撒いた殺虫剤を含んだ落ちた葉や土を食べたミミズによって殺虫剤が体内で濃縮され、このミミズを食べたコマドリが死んでしまったという。ニレの木を枯らすオランダニレ病の対策として、その菌を運ぶキクイムシを殺すために撒布した殺虫剤が原因であった。殺虫剤で汚染されたミミズを食べたコマドリが死んでしまったのである。コマドリが死ぬ殺虫剤の毒量はミミズ10匹分であるとのことであるが、ミミズが生息する環境の汚染の問題を提起した事件であった。
3.「食用ミミズ」:インドでは男性の精力剤として用いられているが、その理由は全身の血流の促進にあるという。食用としてのミミズはニュージーランドの小島のミミズで8種類あるといい、そのうちの2種類は格別の味で、その美味しさは食べてから2日も残るほどで、酋長だけのために特別に保護されているという。中国・広州でも食用ミミズを養殖しているそうである。
4.「漢方薬としての乾燥ミミズ(地竜)」:漢方では、熱湯をかけてから日光で乾燥したミミズを煎じて熱さましとして服用されている。地竜の薬効作用としては、解熱の助長、気道の拡張、痙攣の予防、ならびに利尿などであると述べられている。地竜の解熱作用の有効成分は皮の部分にあるルンブロフエブリンという物質であると報告されている。また、利尿効果は、腎臓の血流改善によると考えられている。
5.「糖尿病と地竜」:宮崎医科大学名誉教授 美原恒博士の書「血栓は倒れる前に溶かせ」(東洋医学舎)によると、生活習慣によるII型糖尿病(I型:遺伝的なインスリン分泌不足)は膵臓のランゲルハンス氏島から分泌されるインスリンというホルモンの低下によって発症する生活習慣病であるが、地竜の服用によって血流が改善され、ホルモンの分泌がよくなってインスリンが産生されると考えられている。
6.「血栓を溶解するルンブロキナーゼ(酵素)」:ご自身の経験に基づいて書かれた東京農業大学栗本慎一郎教授の「血栓を溶かし梗塞を予防しようー驚異の酵素の発見―(東京農大出版会)」によると、脳梗塞や心筋梗塞は血栓による血管障害病である。脳梗塞は脳内の血管が詰まって、その先の神経線維やそのつながりの神経回路に酸素や栄養が運ばれなくなった病気である。
頭蓋骨内の大動脈のうちの中大動脈がもっとも詰まりやすく、「小さい穴」という意味のラクナ地域の神経回路に血液と栄養を運んでいる最細小動脈が詰まるラクナ梗塞は日本人に多いという。この病気の患者に対してはグリセオールやマンニトールなどの多糖類が点滴投与される。血小板の凝集を防ぐためにオザグレルナトリウムや血栓ができるのを防ぐヘパリンの点滴が行われることもある。しかし、脳内出血を起こす危険性があるヘパリンは重症患者には使用できない。
ミミズのルンブロキナーゼは血栓を溶かし、症状が現れなくMRIにも見えにくい微小のラクナ梗塞を予防すると考えられている。フイブリンだけを溶かしてフイブリン分解物質に変えて血流に流し出すルンブロキナーゼは優れた血栓予防剤である。
脳卒中は脳出血と「くも膜下出血などの頭蓋内出血と脳梗塞に分けられる。脳梗塞には原因となる血栓のでき方によって、太い脳動脈が詰まるアテローム血栓性脳梗塞と脳の深部の細い動脈が詰まるラクナ梗塞がある。このほかに、脳塞栓(心原性脳梗梗塞)がある。心原性脳梗塞というのは心臓などの脳以外の部位に生じた血栓が脳の動脈に流れてきて動脈をつまらせることが原因となる脳梗塞である。
また、脳梗塞で詰まった血栓が自然に溶けて再び血液が流れ、その際に動脈から血液がにじみ出て脳内に出血する状態(一過性虚血状態)を出血性脳梗塞という。脳卒中は次のように分類される。
1.頭蓋内出血 ―>1.脳出血
脳卒中 ―>2.くも膜下出血
2.脳梗塞――1.脳血栓―>アテローム血栓性脳梗塞
―>ラクナ梗塞
――2.脳賽栓(心原性脳梗塞)
46歳の若さで急性された高円宮殿下の死因は、心臓が痙攣を起こした(心室細動)状態で血液が送り出せなくなった心臓停止と同じ状態である。スポーツに自信がある中高年の人の激しい運動に起因する病気である。
「ミミズの止血機構」:ミミズの止血機構を研究したのは宮埼医科大学名誉教授の美原 恒博士である。博士の書「血栓は倒れる前に溶かせ」(東洋医学舎)には、食用ミミズ(ルンブルクスルベルス)の止血機構が詳しく述べられている。
血管が傷ついて破れて出血すると血小板細胞が集まってきて固まって血を止める。これが血栓である。タンパク質のフイブリノーゲン(線維素原)はトロビンというタンパク質分解酵素によってフイブリン(線維素)に変化して固まって傷口を補修する。血栓はプラスミンという線溶酵素によって溶解して血行を回復する。血管の内側の内皮細胞が剥がれると、破れていない血管内にできる血栓のコラーゲンが露出する。これに血小板が集まってフイブリンもでき、血管を塞ぐのが血栓症である。「血栓は倒れる前に溶かせ(株)東洋医学舎」。
「ヒトの止血作用(血栓)」:血管が破れて出血すると血小板という細胞が集まってきてくっつきあって出血を止める。血液中のフイブリノーゲン(線維素原)というタンパク質がトロンビンというタンパク質分解酵素によってフイブリン(線維素)という固体に変化し、それによって血液が固められる(血栓)。この血栓はプラスミンという線溶酵素の作用によって溶解する。出血していないのに血管内に血栓をつくり、それを溶かす線溶活性が弱いときの状態が血栓症である。脳血栓で倒れた高齢者の血液内の線溶酵素活性は低い。これが脳梗塞や心筋梗塞などの血管病の原因となる。
「脳梗塞になりやすい人」:高血圧、動脈硬化、喫煙習慣、糖尿病、肥満、高脂血症、運動不足などの人は脳梗塞のリスクが高い。2000年4月に小渕総理が倒れたのは脳梗塞が原因であった。
ちなみに、出産するときに止血剤として使った薬品のフビリノゲンに混入したウイルスによる薬害が社会問題になったことは記憶に新しい。最近は出産時の止血のためにアスピリンやヘパリンを使用することが行われている。
ウロキナーゼという注射薬は血栓を溶かすが、一人1回分のウロキナーゼを作るためには1ドラムの尿を必要とし、5日間の治療には100万円もかかる高価なものである。また、持続性がなく、適正な投与量を選ばないと血管までも溶かして内出血を起こす危険性がある。
ミミズの一種のレッドウオーム(学名:ルンブルクスルベルス、日本名:赤ミミズ)の腸や体液にはウロキナーゼと同じようにフイブリンを溶かす酵素が含まれていることが美原 恒博士によって国際止血学会で発表された(1983年)。これがミミズから取り出した血栓溶解酵素である。これはウロキナーゼのような内出血を起こさず、血栓のもととなるフイブリンだけを溶かし、止血作用のあるフイブリノーゲンを保護すると言う。
倉敷芸術科学大学教授監修・中島公男著:「恐怖の心筋梗塞!元凶は「血栓」にある(ダイセイコウ出版・発行、ぶんぶん書房発売)には、血栓はどうしてできるのか?恐怖の脳梗塞・心筋梗塞、線溶活性を持つミミズの酵素、ルンブルクスルベルス(LR末)の製法、臨床試験で実証されたLR末の効果、患者の感想などが詳しく述べられている。
小渕元総理の突然の死は、同年代の男性にショックを与えた。国会議員の栗本慎一郎教授も「脳梗塞・糖尿病を救うミミズの酵素(たちばな出版)」でご自分が病気から救われた経験を書いている。血栓は、傷ついた血管から出血を防ぐ血液凝固物質であるが、血栓で血管が詰まる血栓症は成人にありがちな過度な血液凝固は脳や心筋の梗塞の原因となる。高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓病などの人は脳梗塞を起こしやすいが、血栓が直ちに溶ければこれらの血栓病を防ぐことができる。
「血管の止血および血液正常化までの過程」は次の6つの過程からなるとされている。
- 出血:血圧・異物・どろどろになった血で傷ついた血管が破れて出血する。
- 止血;血小板が血管の破れたところに集まり、フイビロノーゲン(線維素原)と共に作用して出血を止める(一時止血)。
- 凝固:一時止血の後、フイブロノーゲンがトロンンビンの作用によってフイブリン(線維素)を生成する。フイブリンは止血を促進し、出血部分を治癒する(二次止血)。
- 修復:フイブリンが形成された後、フイブリンを足場にして血管細胞が増殖し、破れた血管を修復する。
- 線溶:血管が修復すると、直ちに血液中のプラスミノーゲンが 内皮細胞から供給されるプラスミノーゲン・アクチベータによって活性化され、プラスミンが生成する。このプラスミンがフイブリンの塊(血栓)を溶かし、フイブリン分解産物を産出して血流を正常にする。
- 血流の正常化:ミミズ線溶酵素を飲用しているヒトの血液中のプラスミノーゲン・アクチベータは、飲用していないヒトの約10倍も多い。これはフイブリンを溶解する性質が非常に高いことを意味する。
「ミミズの線溶酵素」:ミミズの線溶酵素は、ヒトの腸の中でタンパク質を分解するキモトリプシンと似た酵素ではなく、新しく発見されたタンパク質分解酵素である。
「血栓ができやすい内皮細胞」:内皮細胞はすべての血管の一番内側にあって、敷石のようにビッシリ覆っている細胞で、正常であれば血液が詰まることは無いが、何らかの原因によって内皮細胞がはがれると血管壁のコラーゲンが露出(内皮細胞障害)し、はがれた部分に集まってきて互いにくっつきあってくる。
これにフイブリン(線維素)もできて血塊(血栓)は大きくなり、ついには血管を塞いでしまうのである。
線溶(線維素溶解)系の線維素を溶解する酵素の活性化機構:血液が凝固してフイブリンが析出すると、これに反応して内皮細胞からt・PAやu・PAなどのタンパク質分解酵素を分泌して、プラスミノーゲンというタンパク質をプラスミンという活性な酵素に変換し、これがフイブリンやフイブリノーゲンを分解する。線溶系が活性化し過ぎるとフイブリンまでも溶かして出血を起こしてしまう。そのため、活性化しすぎないように抑制する機構が働く。このように、線溶系には活性化と抑制がバランスして出血を防いでいる。
「本格焼酎の血栓溶解酵素活性」:
血栓溶解酵素はアルコールによって活性化される。活性化の度合いは、
乙種焼酎>日本酒>ワイン>ウイスキー>ビール> 禁酒
である。乙類焼酎とは1回だけ蒸留した焼酎のことで、本格焼酎と呼ばれている。酒類の血栓溶解酵素の活性は、
本格焼酎の不揮発成分>>日本酒の不揮発成分>エタノール
の順で、ウロキナーゼ分泌の順序と一致する。本格焼酎が勧めえられる所以である。
7. 私たちの研究:私は20年前から、中国・西安市の第四軍医大学と「動物由来物質の漢方剤「ジリュウエキス912」に関する共同研究」を行っている。生きたミミズを水中ですりつぶし、低温で抽出したものを凍結乾燥して得られた粉末(地竜エキス)をカプセルに詰めて放射線滅菌したのが漢方剤「ジリュウエキス912」で、原料は乾燥ミミズを煎じた地竜と同じである。ジリュウエキス912は約_3%のミネラル(カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛など)を含んだ80%のタンパク質と20%の糖質から成る一種の金属酵素で、過酸化水素分解活性や脂質の抗酸化作用があることがわかっている。
私はミミズのほかに、蚕、ヒル(蛭)、ゴカイ、岩虫、蛤やアサリも調べたが、一番活性が高いのはヒルであった。ヒルのタンパク質に抗がん性があることはイギリスの新聞に出ていたことがある。
ミミズの有効成分の紫外線吸収スペクトル:分光学分析によると特定な吸収光度と活性の間には一定の関係があったのでこの吸収光度を測定すると活性が予測できる。
たかがミミズ、されどミミズである。ミミズから抽出した「912」には血液をサラサラにする素晴らしい効果があることが示された。
血栓が原因となる脳梗塞や心筋梗塞などの血管系の病気による1年間の死亡者数は、がん死亡者数と同じ約60万人である。平成5年度の調査によると、
脳梗塞などの脳血管病患者数は142万人(男性:69万人、女性:73万人)で、がん患者数の91万人(男性:44.3万人、女性:46.6万人)の1.6倍も多い。ミミズは血栓由来の恐ろしい血管病の予防や治療の妙薬である。
おわりに:われわれになじみ深いミミズの主として漢方剤としての研究を述べた。たかがミミズされどミミズである。ミミズの血栓病の予防や治療にすぐれ効果に驚かされる。
―完―
(2008年6月)
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