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現在のがん治療において最も必要な課題のひとつは正常細胞の損傷を防御する研究である。われわれは放射線による生体損傷の防御に関する研究を行なっている。前回は、放射線治療の副作用がビタミン配糖体によって抑制される臨床研究を報告した(第11回国際癌治療増感研究会、桑名市)。
「目的」:今回、亜鉛、マンガン、銅、セレンなどの抗酸化ミネラルを含有するサッカロマイセスセレビジエ酵母が放射線による損傷を予防あるいは治療する効果を発見したので、その効果と機能について報告する。
「実験−1.」放射線防護:10週齢の雄性C3Hマウス(体重:25-28gグラム)に7.5GyのX線を照射し、30日の生存率を測定した。実験群は、100-600mg/kg(体重)の該酵母を含んだ0.5%メチルセルローズ懸濁液(0.3 ml)を照射の前、あるいは後に腹腔に投与した。なお、対照群は、0.3 ml/匹の0.5%メチルセルローズ溶液を腹腔に投与した(n=16-56)。
「実験−2.」スーパーオキシド消去活性:DMPOを用いるESR-スピントラッピング法にて行った。スーパーオキシドはヒポキサンチンとキサンチンオキシダーゼにより発生させた。DMPO−O2-付加体のピーク強度を半分に減少させる酵母の濃度を求め、各酵母のスーパーオキシド消去能を比較した。
「結果−1.」予防効果:
放射線照射の対照群の30日間生存率は7%であるのに対し、照射の30分前に各種の酵母を投与した場合は、生パン酵母A(600mg/kg)の場合の生存率は70%、加熱処理パン酵母B(600mg/kg)の場合は40%であった。また、セレン0.2%含有酵母(600mg/kg)の場合は70%、亜鉛10%含有酵母(100mg/kg)の場合は90%で、抗酸化ミネラル含有酵母は放射線の予防効果を示した。
「結果−2.」治療効果:
(ア)照射直後投与効果:照射の直後に酵母を投与した場合、生パン酵母A(600mg/kg)の場合の生存率は70%で、Mn5%含有酵母(100mg/kg)の場合は75%、セレン0.2%含有酵母(600mg/kg)の場合は80%、亜鉛10%含有酵母の場合は100mg/kgでは90%、銅5%含有酵母(100mg/kg)の場合は100%であった。
(イ)照射60分後投与効果:亜鉛10%含有酵母(100mg/kg)の場合は80%であった。
「結果−3.スーパーオキシド消去活性」:
スーパーオキシド消去活性(重量比)は、亜鉛10%含有酵母が最も高く(1.00)、マンガン5%含有酵母は0.47、銅5%含有酵母は0.42、Se0.2%含有酵母は0.08、パン酵母は0.02-0.10であった。
「結論」:抗酸化ミネラル含有酵母は放射線の予防および治療効果を示し、特に亜鉛含有酵母と銅含有酵母の活性が高かった。スーパーオキシド消去活性が高い酵母ほど放射線防護効果は高いが、その防護機構に関しては今後の研究課題である。
(2006年3月)
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