[提 言]

癌の再発予防のために
ー予防的治療のすすめー

京都大學名誉教授 鍵谷 勤


 平成5年度の統計によれば癌の総罹患者数は約91万人で、癌に罹ったことがある人は300万人と推定されている。癌の治療が終わった人は再発を危惧しているが、医師は再発した癌患者だけを治療する。しかし、再発を予防するための治療は行わないのである。文部科学省は平成16年4月から「第三次対がん十ヶ年総合戦略」を発足させたが、再発を予防する研究は行われていない。

 癌細胞は健康な人でも毎日発生しているが免疫によって癌の発症を防いでいる。癌に罹ったことがある免疫力の低い人の癌細胞は蓄積し続けていると考えられ、数年以内に再発する可能性がある。癌が完全には治癒していない場合(未治癒癌)は1〜3年以内に再発し、癌治療による癌(二次発癌)は5〜10年後に発症すると考えられる。癌の治療を受けたことがある人は再発を予防することが必要である。前立腺癌と乳癌の再発予防には、性ホルモンの働きを弱める抗ホルモン剤が使われているが、タモキシフェンという抗女性ホルモン剤は子宮ガンの原因になることがわかってきた。このことは性ホルモン抑制療法は癌を誘発する危険性があることを示している。癌の治療を受けた人のマクロファージやNK細胞などの癌免疫力は低いと考えられる。癌免疫を高める天然由来の物質が市販されているが、実験的根拠に乏しいものが多い。癌免疫を高めるために、自分のリンパ球やインターフェロンを体外で活性化して体内に戻すLAK法やIFNANK法などの免疫活性化療法を受けることが勧められる。

 100万個の癌細胞が存在する1ミリグラムの癌を完全に消去するには癌免疫療法だけでは安心できない。3〜6カ月毎の定期的な抗癌剤治療で完全に死滅させることが望まれる。この予防的な化学治療は通常の1/2以下の投与量で十分であると考えられるから、副作用に苦しむことはない。

 25年前に中曽根内閣の「第一次対がん十ヶ年戦略」に参加して「放射線治療効果を増強する薬剤(放射線増感剤」の分子設計学的研究を分担した私たちの国際共同研究は抗癌剤の治療効果や癌免疫の効果を増強することを発見し、国内外で700人以上の患者の臨床治療に使われている。

 私たちはサナゾールという癌治療効果増強剤と水溶性ビタミンE(TMG)という副作用抑制剤を開発した。抗癌剤の治療効果増強と副作用抑制を組み合わせた癌の支援治療法は肺癌、膵臓癌、再発乳癌、再発子宮癌、再発卵管癌などの患者の抗癌剤治療に使われている。

 以上、癌に罹ったことがある300万人以上の人に対して、再発を予防するための免疫治療や化学治療を受けることを勧める。

(2004年5月)