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厚労省の統計(1993年)によれば、わが国のガン(悪性新生物)患者の総数は90.9万人(男性は44.3万人、女性は46.6万人)(143人に一人)と推定されている。男女とも20歳から発症して40歳前後から増え、75歳まで増え続け、80歳以上で減っている。50歳以下では女性の方が少し多く、50歳以上では男性の方がかなり多いという傾向がある(図−1)。
男女のガン患者数を調べると、前立腺ガンは3.1万人(2000人に一人)で、患者は60歳前後から現れて高齢になるほど増え続けて減らない(図)−2)。一方、乳ガンは11.4万人(500人に一人)で、25歳から現れて増え、50−70歳で最高になって、70歳からは減っている(図−3)。子宮ガンは5.0万人(1250人に一人)で、20歳から現われて65―69歳まで増え、70歳以上で減っている(図―4)。
ガンに罹る割合は小さく、殆どの人はガンに罹らない。男性と女性のガンは生活習慣とはほぼ無関係で、体質によって決まっていると考える。文献によると、22カ国の健康な女性の血液中のセレンの濃度が高いほど乳ガンの死亡率は低いという関係がある(図―5)。動物実験によると、皮膚、肺、肝、大腸、乳房のガンはセレンによって抑制されている(表)。セレンは鉄、亜鉛、マンガン、銅、とともに抗酸化金属で、ヒドロペルオキシダーゼという活性酸素を消去する酵素の成分である。このことから、一般に、血液中の抗酸化ミネラル濃度、特にセレン濃度が低い人ほどガンに罹りやすい体質であると考えられる。
人間の生命活動のためのエネルギーは細胞内のミトコンドリアが産生している。細胞内には200〜4000個のミトコンドリアが存在し、酸素による栄養素の酸化反応によってエネルギーを産生している。アンドロゲンなどの男性ホルモンは男性的活動の源であり、エストロゲンは女性を女性らしくさせる性ホルモンである。これらの性ホルモンで活性化された生殖細胞内のミトコンドリア数は一般の体細胞より多く、エネルギーを多く産み出していると考えられる。エネルギーを産み出す反応の副反応として呼吸する酸素の1〜2%が活性酸素になる反応が起こっている。活性酸素は発ガン物質であるが、通常はビタミンCなどの抗酸化ビタミンや抗酸化ミネラル酵素によって消去されている。
抗酸化ミネラル酵素が不足している人は活性酸素による発ガンの可能性がある。血液中のセレンの濃度と乳ガンの死亡率の関係(図―5)はこの考えと矛盾しない。放射線による乳ガンの発症に及ぼす微量抗酸化物質の影響の研究は女性と男性のガンの化学的な予防の糸口になると期待される。アメリカでは乳ガンに罹らないように乳房を切除する人もいるといわれるが、この野蛮な行為は遅々とした21世紀のガン予防医学研究の現状に対する抗議の顕れでもある。
(図は省略しました。2004年2月)
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