[論 説]

喫緊の研究課題
―副作用抑制型ガン治療法―
―健康な生体を損傷するガン化学治療の欠陥―

京都大學名誉教授 鍵谷 勤

 

 最近、たびたび細胞障害性抗ガン剤の副作用に苦しむ患者の切実な声や化学治療に対する不信がテレビで放映されている。患者に投与される抗ガン剤の量は、副作用を我慢できる量(最大耐性量)に制限されており、動物の腫瘍を確実に治す量よりかなり少ない。抗ガン剤による完治を約束できないのは副作用のために必要な量を投与できないからである。

 また、抗ガン剤の投与頻度は、多量投与の場合には1カ月に1回で、低量投与の場合には3回乃至4回である。多量投与の場合には14日間もの間、胃や筋肉の痛み、吐き気、嘔吐、下痢、口内炎などに苦しんでいる。低量投与の場合でも1週間に3−4日間は吐き気や嘔吐に悩まされている。つまり、ガン治療期間の半分は抗ガン剤の副作用に苦しんでいるのである。

 主治医は「抗ガン剤に副作用はつきものだから我慢しなさい」と言ってガンを治療しているが、「自信をもって治ると約束できるとは思っていない」。患者は抗ガン剤の副作用と闘って苦しんでいるが、「苦しむだけで治らないのではないか?」と思うことが化学治療に対する不信感である。

 そもそもガン治療の目的は「健康な組織を守り、悪性腫瘍組織を治療する」ことでなければならない。しかるに現在の化学治療は、わずか数十グラム以下の腫瘍を除くために数十キログラム以上の健康な生体を損傷している欠陥療法である。

 抗ガン剤の副作用を抑制できれば投与量と投与頻度を増やすことができ、患者は苦しまずに治療を受けることができるだけでなく、ガンの治癒率は向上する

 私は25年前、中曽根内閣の「対ガン10カ年戦略」に参加して「放射線増感剤の分子設計学的研究」を分担した。京大グループが開発した「サナゾール」は放射線治療効果を増強するだけでなく、化学治療効果も増強すること(1991年)および免疫機能を増強すること(1998年)が国際共同研究によって明らかにされている。

 このガン治療国際共同研究の発展として開発された水溶性ビタミンE(トコフェロール配糖体、TMG)の放射線防護効果(1996年)と被曝治療効果(2001年)が発見され、抗ガン剤の副作用を著しく抑制できることも発見された(2001年)。TMGによる抗ガン剤の副作用抑制は京都の学会で詳しく発表された(2003年6月)。

 NHKニュース(2002年7月11日朝)でTMGの副作用抑制効果を知った患者の要請を受けた主治医は資料を検討して服用を承認した。肺ガン、乳ガン、子宮ガンの患者は抗ガン剤の点滴後にTMGのカプセルを服用して副作用から開放されている。

 ガン患者を苦痛から解放し、治療効果を高める「副作用抑制型ガン治療法の確立」は喫緊の研究課題である。ガン治療医は早急に臨床研究に取り組むことが求められる

(2004年1月)