[論 説]

ガンの治療効果増強と副作用抑制研究の25年

京都大学名誉教授(腫瘍治療医科学)
鍵谷 勤

 
ガン治療効果増強剤の開発研究 ―700名以上の患者が増感治療を受けた―

 今から25年前の1979年、中曽根内閣の「対ガン10カ年戦略」に参加し、「放射線増感剤の分子設計学的研究」を分担した。1986年、副作用は少なく、放射線治療効果を増強する安価なニトロトリアゾール誘導体(サナゾール)を発見した。中国留学生と中国医学科学院のグループが共同研究に参加し、ペルーの医師が臨床研究で増感効果を認めた(1988年)。ロシア科学アカデミーの研究グループはサナゾールが化学治療効果を増感することを発見した(1991年)。IAEAは1995年から5年間、200人の第3期子宮ガン患者のサナゾール増感放射線治療の6カ国の国際共同臨床研究を行なって治療の増感効果を確かめた(2001年)。現在、18カ国の28病院で700名以上のガン患者の治療研究が行われている。国内では国立南和歌山病院が肺ガンのサナゾ−ル増感放射線治療の研究結果を発表した(2003年10月)。

正常組織の防護剤の開発研究 ―副作用を抑制したガン治療―

 1996年、フリーラジカルを不活性化する水溶性ビタミンE(TMG)の放射線防護作用を発見した(日本放射線影響学会第39回大会、大阪)。その後の研究成果は「健康のための放射線防護剤の国際会議」で発表した(2001年7月、京都)。2002年7月、ロシア科学アカデミーの研究グループは、TMGが抗ガン剤の毒性を著しく抑制することを発見した(NHKニュース)。TMGによる抗ガン剤の副作用抑制の詳しい研究結果は2003年6月に発表した(国際癌治療増感研究協会第9回研究会、京都)。

ガン支援治療の臨床研究 ―ガン治療の副作用に悩んでいる人のために―

 抗ガン剤の副作用に苦しんでいた乳ガンと子宮ガンの患者たちは、主治医の承認を得てTMGを服用し、副作用が著しく軽減されたことを認めている。現在も、主治医の了解の下に、抗ガン剤点滴の2時間前にサナゾールを服用(治療効果増強)し、点滴後にTMGを服用(副作用抑制)する支援治療の臨床研究が行われている。

これからの研究 ―TMGとサナゾールによるガンの化学的予防―

 TMGはフリーラジカルを消去する。また、微量のサナゾールの継続投与はガンの転移を抑制し(1996年)、癌免疫を高める効果が発見されている(1998年)。これらの結果は、TMGでフリーラジカルを消去し、微量のサナゾールで免疫を高め、転移を抑制して放射線や発ガン性物質によるガンの発症を予防できる可能性があることを示している。 文部科学省が2001年に公表した技術予測によれば、ガン予防薬は2016年に普及し、ガンの転移を防ぐ治療は2017年に実用化されると言う。TMGとサナゾールによるラット乳房腫瘍の発症予防は国立放射線綜合医学研究所で、マウスリンパ腫の発症予防はロシア・トムスクのガン研究センターで研究が始められる。 

(2004年1月)